歯を抜く?抜かない? ―矯正治療で本当に大切なこと―

こんにちは、はばたき矯正・こども歯科 院長の北見です。
矯正治療の相談をすると、「歯を抜いて治療をしたほうが良いね」と言われた方も多いと思います。
おそらく皆さんは「できれば抜きたくないな」「抜かないで治す方法はないの?」と思われるでしょう。
こう思うことはとても自然なことです。
私も矯正治療の計画を考えるとき、健康な歯をできる限り残すことを大切に考えています。
しかし、患者さんの歯並びや骨格・口元のバランスによっては、どうしても抜歯が必要となる症例も存在します。
今回は矯正治療で必要な抜歯・非抜歯の考え方について、できる限りかみ砕いて解説いたします。
患者さんの未来のために考えること
インターネットやSNSで

「抜かずにできる矯正治療!」
「わたしは抜かないで治しました!」
と非抜歯であることが正解かのような広告も多く見かけます。
ですが、歯並びや骨格は一人ひとり違い、全員に当てはまる治療法はありません。
「健康的な歯並びにすること」ではなく、「抜かずに治療すること」が目的になっていませんか?
抜かないことを優先して骨や歯ぐきに不具合が出てしまっては、治療しているのか壊しているのかわかりません。
治療が終わった直後はキレイに見えるかもしれませんが、10年後・20年後もその状態を維持できるものになっているでしょうか?
矯正治療で本当に大切なことは、患者さんの希望も汲みながら、患者さんの未来のために最適な治療方針を考えることです。
抜歯の目的とは?

抜歯が必要とされる主な理由は、歯を並べるスペースをつくるためです。
しかし、矯正治療の目的は「ただ一列に並べること」ではありません。
歯と歯ぐきの健康を守るために「歯並びとかみ合わせを治し、長く安定する状態に変えること」です。
そのため並べること以外にも、以下のようなことを考えます。
歯を土台の骨(歯槽骨)の内に正しく収める
歯の傾き具合を整え、上下で一体化したかみ合わせをつくる
口元のバランスを整え、自然な横顔を作る
これらを実現してはじめて長期的に安定する歯並びが得られます。
このために、抜歯が必要と判断されることがあります。
抜歯しないで治す方法の限界
抜歯を避けてスペースを確保する方法はいくつかあります。
- 拡大
- IPR(ディスキング)
- 遠心移動
とても有効な手段なので、私も必要に応じて使うことも多々あります。
しかし、それぞれの方法にも限界があります。
拡大の限界
U字型の歯列を横に広げて、スペースを確保する手段です。
高台の崖に張り出した家のように、土台となる骨の横幅を越えて歯を移動すると、歯ぐきが下がったり歯根が短くなったりしてしまいます。
IPR(ディスキング)の限界
歯の両脇をやすり掛けして、歯を少しずつ細くして隙間を作る手段です。
削れる量には限界があり、1か所あたり0.2mmくらいが限界です。
削る量が大きくなるほど、知覚過敏などの症状が起きやすくなります。
遠心移動の限界
奥歯を含む歯列全体を奥(口から喉の方向)に向かって移動させる手段です。
拡大と同様に後ろ側にも土台の限界があります。
土台を超えて歯を後ろ側に移動させると、奥歯が傾いていきます。
傾いた歯は歯磨きが届きにくく、後戻りも起きやすいため、せっかく矯正治療をしたのに戻ってしまう原因にもなります。
非抜歯をうたう装置の罠

具体名は避けますが「この装置なら非抜歯で治療できる!」といった情報発信を見かけることがあります。
これははっきり申し上げて、間違いと言えます。
抜歯・非抜歯を決めるのは、「装置」ではなく、患者さんの歯・骨格・口元のバランスをみて最適なゴールを見極める「診断」だからです。
よく切れる包丁さえあれば、だれでもどんな素材でも美しい料理が作れるわけではないのと同じです。
どのような装置もあくまで道具であり、素材(患者さんの状況)を見極め、それを調理する(治療する)手順を知っていて、初めて道具(装置)の機能が発揮されます。
診断なくして、矯正治療は考えられません。
非抜歯が有効なケース
すべての矯正治療に抜歯が必要なわけではありませんし、非抜歯矯正を否定しているわけではありません。当院でも非抜歯で治療されている方がたくさんいます。
以下のようなケースでは、無理のない範囲で非抜歯を目指せる可能性が高いです。
成長が有利に働く時期に、うまくコントロールできたケース
軽度のデコボコ(叢生・そうせい)で、奥歯にずれが少ないケース
土台の骨に余裕があるケース
まとめ

歯を抜くか、抜かないかは、とても大事なポイントです。
でもこれだけが判断基準ではありません。
患者さんが望むゴールと、客観的にみた実現できるゴール、そして長期的に安定するゴールを目指して、一人ひとりにとっての最善の治療を一緒に考えることが、矯正治療で最も大切なことです。
成田市公津の杜の歯医者、はばたき矯正・こども歯科では矯正治療を専門とする日本矯正歯科学会認定医の院長が、矯正治療に関する相談を無料で行っております。お気軽にご相談ください。
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